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競争相手に勝つ秘訣!?マーケティング戦略で大切な「ポジショニング」って?

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「競争社会」といわれる今、企業が市場競争を勝ち抜くためには、たくさんのライバルたちの中でも際立つ「個性」を発揮する必要があります。そこで近年では、マーケティング戦略として「ポジショニング」が注目されています。ポジショニングとはいったいどのような方法なのでしょうか。今回は、経営学を研究分野としている、高崎商科大学の美藤信也准教授に、マーケティングやポジショニングについてお話を聞いてみました!

マーケティングは時代によって変化するもの

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まずは、マーケティングの意味について教えてください。

マーケティングとは、簡潔に言うと、企業が顧客のニーズを把握及び適合させ、顧客満足度を高める戦略を構築することを意味しています。例えば、企業が商品を売るために、その商品が売れる仕組みを考えたり、より効果的に利益を得る方法を考えたりすることもマーケティングの一環です。

近年、企業のマーケティング活動は、楽天やAmazonといった通信販売業を主とする「Eコマースマーケティング」が注目されています。これを端的に言うと、電子商取引を基軸としたマーケティング手法のことです。最近では、消費者の購買行動が、お店に行くことからさらにネットで買う消費者が増えてきたため、ECサイトのようなリアルな店舗がない状態でありながら、いかにマーケティングを行い、売り上げを伸ばしていくかという企業戦略が活発になってきています。

他にはどんなマーケティング手法がありますか?

今はSNSを使ったマーケティングも注目されていますね。LINE、Facebook、Instagramはユーザーの属性が分かりやすく、ターゲットを絞り込みやすいですし、コストを抑えてうまくプロモーションすることができます。観光業界、アパレル業界、飲食業界においては、特にInstagramの影響は大きいと思います。

私の授業でも、有名企業のSNSマーケティングの事例を踏まえながら、広告について講義をすることがありますが、最近はテレビCMよりもネット広告が増えてきたので、これからさらにSNSマーケティングは伸びていくと思いますね。少し前までは広く大衆に向けた「マスマーケティング」が主流でしたが、今の市場はよりターゲットを絞った「個々のターゲットに向けたマーケティング」へと変化しています。

企業戦略に欠かせない「ポジショニング」とは?

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マーケティングについて考えるとき、「ポジショニング」が大事だと聞きましたが、ポジショニングとはどのような戦略なのですか?

競争社会といわれる市場競争の中で、自社の商品やサービスをどうしたらお客さんに選んでもらえるかを考えたときに、自社の商品やサービスの「特徴」、つまり自社のセールスポイントを明確に、それを顧客に位置付けることがポジショニングの役割です。

例えば、消費者の方々の中で、ユニクロの商品は「低価格でベーシックな商品」というイメージを持つ方が多いと思います。つまり、企業イメージや自社の商品やサービスのイメージが顧客の頭の中で位置づけられていることがまさにポジショニングなのです。

他にも、「おいしくてすぐに食べることができる」お店といえば、ハンバーガーチェーン店や牛丼チェーン店などを思い浮かべると思います。さらに競争相手を見ながら、例えば牛丼チェーン店の中でも「男性が一人で入りやすい店」、「ファミリーでも居やすい店」など、自社ならではの特徴について考え、差別化や店舗開発に活かしていくのもポジショニング戦略で大事なことです。

自社の特徴やメリットを基に、市場におけるポジションを考える、ということですね。

近年は競争相手も変化しています。例えば百貨店業界では、昔は百貨店同士で売上を競争していましたが、今や百貨店で扱われている商品はECサイトでも買えるようになり、オンラインショップさらには専門店等も百貨店の競争相手になってきています。

また、コーヒーショップやカフェもたくさんありますが、最近ではコンビニでも安くておいしいコーヒーが買える時代になってきました。このように時代や競争相手が変わってきているため、さまざまな方法や見方を変えることがポジショニング戦略に求められることだといえます。

似たような商品だとしても、消費者にとってのメリットの切り口を変えることで、自社ならではのポジショニングを考えることができますし、顧客への付加価値を発見することができるはずです。このとき重要なのが「ポジショニング・マップ」という考え方で、価格やデザインなど、ポジショニングの軸の立て方をさまざまな方向から検証することで、新しい可能性が見えてきます。

マーケティングを学ぶことで見方が変わる

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マーケティングについて学ぶことで、どのようなメリットがありますか?

マーケティングについて考えることで、自分がよく足を運ぶ店舗など、身近な店の印象も変わってきます。

例えば、全国で老舗百貨店の閉店が相次ぐ中、高崎にある高島屋はマーケティングを強化していることがわかります。実際に足を運んでみると、顧客のニーズをつかみながら新しい店舗をオープンさせたり、化粧品売り場は改装するなどして、さまざまな工夫が成されていることが分かります。

高崎は昔から「商業が強い」という特徴があり、さらに群馬県はヤマダ電機、ビックカメラ、サンヨー食品などの大手企業の創業の土地でもあります。マーケティングで学んだことをそのまま就職先の企業で活用することができるのも、マーケティングを学ぶ大きなメリットですね。

マーケティングについて学ぶとき、まずはどんなことからスタートすればいいでしょうか?

学生たちには「一番自分が読みやすい本を読めばいいよ」と言っています。有名企業などのマーケティングの事例から興味を持つのもいいですし、マーケティングの理論から学ぶのもいいと思います。あとは、日本経済新聞等の新聞を読み、最新の企業経営の動向についてアンテナを張っておくことも大切だと思いますね。例えば、消費税が上がることで企業がどんな動きをするのか、自分だったらどう考えるかなど、シミュレーションしたりすることも大切です。

マーケティングは幅が広いですし、ブランド戦略・商品開発・プロモーション戦略など、それぞれ興味を持つ分野も学生によってさまざまです。学生には「何か分からないことがあれば、いつでも個別で相談に来てください」と言っています。まずは自分にとって「おもしろい!」と思えるきっかけがあればいいなと思います。

最後に、学生たちに向けてメッセージをお願いします。

マーケティングは企業経営の中枢を担う分野のため、自分の考え方や実力次第で、企業を成長させたり、売上を伸ばしたりすることができます。企業を成長させることや商品開発を行うことなど、企業経営の中心の仕事に関わりながら、企業戦略を立てていくプロセスはとても面白いことだと思います。

そして、お客さんに喜んでもらえることこそが、マーケティングを学ぶ楽しさにつながります。「企業戦略に興味がある。」「商品やサービスを通して、お客様に喜んでもらいたい。」と考えている方は、ぜひマーケティングを学んでくださいね。

先生のおすすめ図書

「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」

マーケティングを代表する書籍といえば、これです。

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今回インタビューした教授

商学部 経営学科

美藤 信也 准教授

・「日本サービス業の海外進出戦略に関する実証分析-サービスマーケティングと経済成長を焦点として-」(2016 年)『湘北紀要』第 37 号
・「グローバルサプライチェーンにおける販売戦略に関する実証分析-日本製造業を焦点として-」(2013 年)(査読付き論文)大阪産業大学経営論集 第 15 巻第 1 号
・「グローバル経営における調達戦略に関する実証分析-日本製造業を中心として-」(2012 年)(査読付き論文)日本物流学会誌 No.20

美藤 信也 准教授